突然ですが書評を書きます!!!!!!
「人間はいつも使っている言葉がなくなると、変ってしまうものだなと彼は思う。人間ではなく、まるで人間を装っている何かのようだ。」
残像に口紅を(中公文庫)
作者:筒井康隆
発売年:1995年
概略:「あ」がなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまった。世界からひとつ、またひとつと言葉が消えてゆく。愛するものを失うことは、とても哀しい……。言語が消滅するなかで、執筆し、飲食し、講演し、交情する小説家を描き、その後の著者自身の断筆状況を予感させる、究極の実験的長編小説。
概略の通り、”世界から「言葉」が消えていく”という”虚構”の中で小説家の主人公がこんなことやそんなことをするただの変態小説です。何が変態かって、世界から言葉(音)が消えるとその言葉(音)を含む概念が消滅してしまうこと!キャー!エッチすぎる!
つまり、もし世界から”す”が消えてしまえば、私の大好きな抹茶フラペチーノやチャイティーラテが飲める某お店自体も消えてしまう訳です。世界から無くなっちゃうんですねえ。許されねえな
そんなこの本のエグいパない所をひたすら書くのです。
この本のここがエグいパない!①設定
なーんかちょっと概略見てみたら、世にも奇妙な物語っぽいようなぽくないような、そんな感じしますけど何がエグいってこれ、23年前の作品なんですね。
筒井康隆といえば映画「パプリカ」の原作者として有名ですね。PTという夢を共有出来る装置が発明され精神疾患の治療に役立てられるようになった近未来、何者かによって盗まれてしまったPTを取り戻すためPT治療の第一人者・千葉は夢探偵パプリカとして犯人を捜す…的な、つまりSF作品ですよ。私これ映画見たけど難しかった。インセプションっぽい?その他にも筒井康隆の作品ってSFが多いです。それもそこまで遠くない未来の話が多い…
ほんで、身近なところから着想を得ている作品が非常に多い!
夢泥棒を捜す「パプリカ」、大阪と東京で戦争する「東海道戦争」新婚旅行は土星に行く時代を描いた「ベトナム観光公社」そして日常から言葉が消えていく「残像に口紅を」…なんか、いや分からなくもないけど、お前どっからそのネタ湧いてきた?普段何考えてんの?的な、だからこそ内容が親しみ易い!SFが苦手な人でもそこそこ読み易い!と私は思う
この本のここがエグいパない!②ギミック
そしてこの本で私が伝えたいことは小説家という立場なのに言葉を容赦なく奪ってっちゃう筒井康隆がドSなのかドMなのかって事ですよ!!!!!!!!!
というのもですね、この作品は世界から言葉が消えていくのと同時に小説上からもその言葉が消えちゃいます。
つまりこの世界から「い」が消えたとしたら…
・私今めっちゃ眠いんだよね、眠すぎてやばいw
↓
・私現在めっちゃ眠みなんだよね、眠さが過剰w
と言ったように、ちょっとイキリオタクっぽさすら出る、それくらいのヤバさがこの作品にはある。
小説って本来文字で構成されるものなのに、そんな無理して大丈夫???? 作品成り立つの???筒井康隆強気すぎでは???
そうお考えの方もいらっしゃると思いますが、
実際筒井康隆は強気だったし、そんな心配する必要ないくらいには作者の文章力がハンパじゃない
この作品を買ってから知ったんですけど、某バラエティ番組の読書芸人でこの作品が取り上げられてたらしく、出版された当初は物語の後半は袋とじにされてて、「この時点でこの本が面白くないと思った方には返金対応致します」との作者からのメッセージ…
いや強気かよ(笑)
そして物語が進むにつれて当然音は消えていく訳です。使えない音が出てくるにつれて物語で使える表現・単語にも限りが出てくる…
よ、読みにくい…
と、なることがビックリするほど皆無
いや逆に怖えーよ…どっからその言い回し出てきたんだよ…ってなる。さすがです。
つまり筒井康隆の小説家としての本気が見えます。
この本のここがエグいパない③筒井康隆和製エミネム説
最初は何の気無しにひたすら読み進めていったこの本ですけど、中盤に差し掛かったくらいから思ったんですよね
後半使える音が減っていく
↓
自動的に言い回しが限られていく
↓
え…?やだ、なんか心地いい…
これ、ラップか?
ってなるくらいの疾走感が出てきます(笑)
当然の話ですけど、擬音に頼りがちになってしまったり体言止めを使わざるを得ない状況が出てきてしまうんですね。そこで生まれる押韻!!韻の硬さと疾走感から生まれる謎のフロー!さすが小説家と言わざるを得ないバラエティに富んだリリック…
フリースタイルダンジョン流行ったし、現代の若い人読むべきでしょこれ。ラッパーの人は是非この本で勉強してほしいとすら思ったよね。
この本のここがエグいパない!④濡れ場がウケる
物語が進むにつれて言葉が消えて・その言葉を含む概念も全て消えていきますから、主人公は当然身の回りのものが消えていく中で生活していかなきゃいけないですね。
その中で突如出現する濡れ場、ここがメッチャ個人的に面白かったです
言葉が消えていくことに順応した主人公は自分の意思で言葉を消せるようになるんですねえ
かつて意中の人だった女性とまさかのワンチャンするシーンは服を脱ぐ面倒臭さから自ら洋服に関する言葉(音)を消していくという暴挙に出ます(笑)
小説ってそういう細かい描写からその人の人間模様が読み取れるのが醍醐味じゃないですか〜とにかくちょっと笑えた
この本のここがエグいパない!⑤結局面白い
こんだけ長々しく書いといて、結局何が言いたいかって普通にこれ面白いです(書くの疲れてきた)
すごい真面目なことを書くと、私が読んで考えたことはこう↓
読んでる途中は「ワオ、この小説はよくできたSF小説だ」ってなるけど、実際現代でこの小説と同じ現象が起きらないとは限らないなと
若者の活字離れ・紙媒体の減少が著しい中で若者言葉とか略語がバチボコに出てきて、本が出版された当時から23年でいろいろ便利な言葉が生まれてきたわけで…
23年前は”エモい”なんて言葉誰も使わなかっただろうけども、これからもし”エモい”が主流になってったら、本来の意味である”情緒的な”って言葉すら使わなくなって、、、
ってなりかねないんですよねえ
なんか現代の私たち若い世代にちゃんと文字読めや!!!語彙力つけとけ!!って言われているような気がしてマジで後半気が気じゃなかった
そもそもこの小説、日本語以外の言語で作ろうと思ったらどうなるでしょう?
パッと思いつく限り、難しくないですか?
50音存在して、その音の組み合わせで数え切れないほどの言葉と意味を生み出してきた日本語だからこそ書けた小説であって、それを十分に熟知して言葉を巧みに操れる筒井康隆だから書けた本なんですねえ
この本のここがエグいパない!⑥最後まで楽しめちゃう
私が個人的にここも読め!って言いたいのが最後の解説です。
まさかの小説に関する解説でなく、
作品内で消失していった音の順番
について気になりだしたのがきっかけで
それをテーマにしてちゃっかり卒論を書いてしまった大学生の調査報告が読めます
これがマジモンの言語オタクか…と思って鳥肌立ちました
ほんで予想の450倍くらい理解が難しかったのでサッと目を通すだけでも読んでみましょう。私は脳の容量が2MBしかないので3ミリも理解できませんでした。
寝る前布団に入って読み始めると自動的に脳がシャットダウンしてくれるので深い良質な睡眠をとることができますよ
ここまで3000文字以上ザッと書いてますけど、なんで書評はサラッと書けちゃうのに授業のレポートは馬鹿みたいに時間かかるのかマジで理解できませんね。
ほんでもってここまでの3000文字弱、本の紹介以降私が書き綴った文章の中に「あ」という言葉とそれを含む単語は存在しなかったはずです。
1つの音がなくなるだけでも文章書くの大変だったのに、50音をひたすらコンスタントに消してった作者、やっぱすげえ
マジ眠い
おわりです